展覧会

  • 概要
  • イントロダクション

あの頃の、遠い記憶が蘇る場所で
子どもの頃に住んでいた町がある。とくに目立つもののない、ごくふつうの町並みだが、何十年ぶりかに訪れたとき、子どもの頃のなつかしい記憶がぐぐーっと湧き出てきて、思わず胸がつまった。毎朝おつかいにいったパン屋、友だちと遅くまで遊んでいた公園、好きなコとよく出会った図書館。移り変わりの激しい今の世の中で、幸運にも残っていた遠い昔の景色の断片。どれも、あの頃の感覚とちがって驚くほど小さくなってみえたが、その場所だけが、まるで時の流れから解き放たれたかのように、ピュアで幻想的なアウラにつつまれていた。
EXHIBITION C-DEPOT 2008では、「あの頃の、遠い記憶」を呼び起こしてくれる〈home〉なる感覚を、絵画、イラストレーション、立体、工芸、映像、メディアアートなどのさまざまな視覚表現によって立ち上がらせている。日々の生活でほとんど思い出すことのない、遠く頭の片隅に眠っている、はるかかなたの記憶の断片。C-DEPOT のアーティストが写し出す、幾重もの「あの頃の、なつかしい記憶」が交差する場に足を踏み入れることで、あなたもまた、遠い昔の自分に会いにいってはどうだろうか。
text by AWATA Daisuke